近頃、とみに集中力が高まっているようで、時間を忘れてなにかに没頭することが多い。
身体には負担をかけているようだが興味が止まない。これも北海道ツアー効果かしら。
そういえば最近倒れてないな。そろそろかもしれん。
というわけで、こんな時間ですが息抜きがてら溜まっているコメントを。
少年はたいへんお洒落が好きで、終業式の際、自身の、シャツの白さが眼にしみて、いかにも自身が天使のように純潔に思われ、ひとり、うっとり心酔してしまう程でした。彼はこの自身のお洒落な性質のために苦労し、やがて落ちぶれていくのです。果たして少年の考えるお洒落とは、彼にとってどのような位置づけなのでしょうか。
この作品では〈物質的なものを求め続けるある少年の憐れさ〉が描かれています
少年にとってお洒落とは、「現世唯一の命」であり、世界のすべてだったのです。そんな彼は、その性質よって翻弄され、やがては自身の恋人をも、この自身のお洒落感によって欺かなければいけなくなるのです。このような少年の姿をみて私達は彼を憐れに思い、彼の憐れさは何所にあったのだろうと考えます。すると、私達は彼のお洒落感とは対照的な「精神的」なものに着眼することでしょう。精神的な部分を無視したことが彼の不幸を招いているからこそ、私達はそれに注目し、その重要性を改めて知ることになるのです。
◆わたしのコメント
論者はこの作品を、物質的な価値観への批判として理解したようです。お洒落好きの童子が、いかにおしゃれに心酔し落ちぶれていくかということを見て、それを一般的な仕方で理解すれば、そう言えるでしょう。
しかしここで立ち止まって考えてみてください。「待てよ、しかし物質と精神の対立を描いた作品は、他にもかなりの数があるのではなかったろうか。たとえば花咲かじいさんなどの昔話、ヴィヨンの妻などの近代小説もそうだと言えるし、そもそも学問を二分する世界観もそうして分かたれていたはずだ。それは人間の歴史の中で、そういった対立が繰り返されてきたからなのだ…」と。そうすると、物質と精神の対立は、森羅万象における極めて大局的な対立であることがわかりますから、どんな物語でも、究極的にはそれらについて語っていると言っても過言ではないのです。
こういった一般化の仕方における誤りを、「過度の一般化」と呼びます。とはいえこの作品では、その対立が物語の本質に近いところにありますから、あながち間違いとは言いきれません。中学生の読書感想文では合格をもらえるでしょう。しかしここで問われるのは、一流の評論としては、どのような論理性が引き出されるべきなのか、ということです。それを少し見てゆきましょう。
おしゃれに心血を注ぐこの少年の価値観は、一言でいえば「 瀟洒(しょうしゃ)、典雅。」ということに尽きており、それは彼の人生の目的すべてを貫いていると言っても過言ではなかったのです。そうして外見ばかりを気にする性質を持って生まれた少年は、いつどこで何をしていようとも、飽くなきお洒落への探求をやめようとはしません。小学校の修業式、中学校の入学式、高等学校へと進学し都会に近づいていっても、その熱意は燃えつきませんでした。校規のきびしい中学校に入ったときと、大学時代に左翼思想にかぶれたときには、一刻の暗黒時代となりましたが、恋人ができたとなると、やはりお洒落をせずにはおれません。「洗いざらしの浴衣に、千切れた兵古帯ぐるぐる巻きにして恋人に逢うくらいだったら、死んだほうがいいと思いました。」という具合です。
さて、ここまで物語を追ったときに、この少年の中に、お洒落ということにたいしての情熱があれど、ある時には暗黒時代を迎えていることを、例外だとして片付けてしまってよいものでしょうか。この少年は、強烈に熱する時があるかと思えば、その逆に、まったくの極端に振れることがあるのではないでしょうか。文中にも、それを的確に言い表した一文があります(ある段落の一行目です。どこにあるか探してみてください)。
その疑問が解けると直接に、彼のお洒落のあり方というものが、周囲には彼の思惑とは違った形で現象していることの理由に合点がいくことになるはずです。
以上、「お洒落の暗黒時代の存在」と「お洒落についての周囲の受け止め方」の謎が解けるでしょうか。ややもったいぶった言い回しになっていますが、それもあなたが独力で、この物語のもつ構造に気づいてほしいからです。最近は、太宰治の作品を努めて読んでいるようですが、その太宰作品への必要性の認識はいまだおぼろげなものであったとしても、決して故なきことではありません。自信を持って精進を重ねてください。
ノブ頑張れ、
返信削除私の頭はオーバーヒートしました。
シャットダウン
相対性を逸脱すると、鬼畜に思われることが
返信削除あるかもしれません。
ただ、物事においての一貫性を持たせることは
見習いたいです。
「おのれの服装が理想どおりにならないと、きっと、やけくそになる悪癖を、この少年は持っていました。」
返信削除↑~
でしょうか?