アフター。
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ものづくり研究仲間への報告なのでメモ書き程度ですが、こんなふうになりました。
しばらく見ないうちに何があったのか?
と言われれば、技術的にいろいろと蓄積があったために、1年経って見てみたらそのぶん手直ししたいところがあり、他の作業の合間に改修した、ということになります。
わたしは過去に主に扱った素材については、それが主だった探究の対象から外れたあとにも、暇を見つけては実験するのが好きなのですが、自転車用として生まれたこのバッグもそういう意味で、実験台として散々な目に遭ってきました。
自転車本体との固定具が外れて高速移動中にアスファルトに叩きつけられたり、雨の中晒されて放っておかれたり、猫の寝床になって引っ掻き耐性を調べられたりなどなど、革好きが見れば悲鳴を上げそうな数々の試練がありました。
そうして1年が明けると、やはり角には傷が、フェイスには水滴跡が、真鍮には緑青が顔を出してくるところをなんともいえない気持ちで眺めながら、これも人様にもっとよい道具を提供するため…と作り手とバッグに言い聞かせてきましたが、年末年始にバッグ類のメンテナンスをしているときに、さすがに悪いかなあ、という思いがしてきたものでした。
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思い立ったが吉日、というわけで、その場でおもむろにカッターナイフを取り出し、マチを取り外しにかかった…というのが先週末です。
さて結果から言えば、この時は、他の行程で余った柿渋染め液で染付けて、水滴跡がどのくらい消えるものか、また消えないものか、実験がてらに補修しようとしたつもりだったのですが、どういうわけか他にも色々と変わってしまいました。
前から、サイドバッグやビジネスバッグなんかの作製依頼をいただいているので、オーナーさんには参考になるところがあるかも知れません。
以下は今回の回収箇所と雑感です。
◆全体の色調とフェイスの変更
前回の製作で、フェイス部は型紙よりも前面に膨らむ傾向があることがはっきりしたので、別の顔も試してみることに。
柿渋染めにしたことでG1に色調が近づいたため、姉妹モデルの位置づけとし、金属部のアンティーク加工もやすりがけして真鍮色にしました。
前回のコンチョ穴が空いたままなので、大きめのコンチョで隠すか、コンチョとフェイスの間に革を挟むかしたほうがよいかもしれませんね。(下の写真では別のコンチョになっていたりもします)
◆ベルト留めの盾のモチーフを補強
以前は、バッグ全体に2mm革を使ったために盾が立体感に乏しかったところを、裏面から補強し、膨らみを増すことにしました。
「無駄なものは出さない、つけない」という厳しい制約が、いかに作り手を成長させるかは、表現に取り組む人にはぜひとも伝えておきたいところです。
◆裏地の追加
余り物のピッグスエードがぎりぎり足りたので貼り付けました。
高級感は出ましたが、雨にさらされた時に剥がれてくる可能性がないとは言い切れません。また日焼けで退色することから、自転車バッグとして常用するには気苦労が増えたかもしれませんね。
耐摩耗性は見た目よりずっと強いとはいえ、野ざらしで常用するものにピッグスエードを使うというのは、実用上の不安が残ります。これからそのことも試してみなければなりません。
◆パイピングを廃止、背面下部にDカンを増設
前回、本体部とマチのあいだにパイピング部があったのですが、あってもなくても変わらないようなので廃止しました。
また、前回ではひっくり返さずに縫い進めたため製作時間が長くかかりすぎ、普及モデルとしては実現不可能なレベルでしたが、使い込んでずいぶん皺が入ったので、これも味かと思い、思い切って縫ってからひっくり返す、という手法を取りました。
これによって、大幅に製作時間は削減できましたが、やはりかなりの部分で大きな皺が入るので、この固めの革を使う場合は、全体をアンティーク風に整えたほうが適切でしょう。
逆に言えば、この製法では綺麗めには作れない、ということです。
同じ構造の市販の鞄に皺があるのは、これが理由です。
◆マチのボタンの増設
よくある工夫ですが、以前作りたての時はなくてもいいかなと思っていたところ、革がへたってくると、やはりあったほうが型くずれしにくいなと思わされました。
ボタンは強力なものを使わなければ革の張力で外れてしまうような印象ですね。
◆収納性は以前のまま
A4ノートのみならず、A4のファイルも3冊入ります。
というか、もともとそのために作ったのでした。
もしビジネスバッグを作る場合のサイズ感としては、横幅はこの程度あれば安心、マチの分厚さについてはA4ファイルにして2冊ぶんくらいあればよい、というところでしょうか。
あとは、自転車に固定する方法についての進展があったときに、改めてお伝えします。
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