2012/05/02

デザインの世界観をいかに継承するか:G2R "BLACK KIWI" (3)

昨日の記事では、


抽象から具体、具体から抽象へののぼりおりのお話をしました。

わたしたちはその過程を通して、抽象的な図形の組み合わせをいくつかのモチーフを使って具体化することによって、実際に身をもって生きている生き物のありかたにデザインを近づけてゆこうとしたのです。

ここでは当然ながら、実際の生き物の写真をそのままに顔として使うわけではありませんから、いずれにしろ一定の抽象化が成されているわけですが、それでも、その抽象化というものが、出来の悪い創作物であってはいけない、ということは常々念頭に置いているのです。

出来の悪い創作物というのは、一言でいえば現実から学ばない、ということであり、今回の場合であれば、自然とそのあり方からなにも学んだ形跡がない、ということでした。

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それならば、わたしたちにとっての良い創作物とは何なのか、ということも明らかですね。

そういう問題意識を持ったうえで、動物の骨格の図鑑や筋肉の流れといったものとにらめっこして、生き物の身体のありかたを大掴みにつかまえられるようになると(これはひとつの技です)、モチーフそのものにはあまりこだわらなくても良くなっていったのです。

これが、前回のさいごで、「尻尾というモチーフは相対的に重要性が薄くなっていった」と述べていたところのことです。

そういうわけで、わたしたちが今回つくったものは、こんなかたちになったのです。

G2Rデッサン
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あえていくつかの薄い線を残してあるので、自分でデザインに取り組んだ人はちょっと面白くみてもらえるのではないかなと思います。

ここで使われている線と、その接点の選び方の説明に入る前に、今回のデザインにたどり着いた過程をおさらいしておきましょう。


最終的に、フロントバッグとリアバッグの関係は、小鳥(子鳥)と親鳥のような関係になりました。
そしてまた、それらが自転車を含んだ全体として、ひとつのまとまりを持っているように作ったことも、おいおい見てゆくことにします。

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さて、では今回のリアバッグのフェイス部分には、どういった線が隠されているのでしょうか。

中央のコンチョをはさむ両サイドのベルト部には、ベルト留めがあります。

ここにはたくさんの円が含まれていますが、円の中心はひとつしかないことに注意してください。(×で示したところ)
見た目にはたくさんの線が描かれている場合にでも、それらがひとつの原則や原理を守って描かれていると、意外と複雑にはならないのです。


同じように、コンチョの少し上には隠された中心があり、そこからいくつかの円が広がっていることがわかってもらえると思います。

×で示した点は、フロントバッグのコンチョと同じ高さに設定してあります。
この点は、バッグを作ってしまえば直接は目で見ることはできなくなりますが、それらをとりまく円周をたどってゆくことができれば、観念的に浮かび上がらせることができます。

フロントバッグが太陽だとすれば、太陽の光を受けた月が、このリアバッグということになります。

そのような隠された中央をもつ円は、フェイス部下の切欠きに描かれており、フロントバッグの一点から延びてきた線が、自転車を貫いて後部のリアバッグまで延びたうえで、ここにおいて円環となり、再びまたフロントバッグの一点へと収束してゆくかたちになっています。


ベルトの切り方も、やはり円ですね。
その曲線によって、コンチョの下部がゆるやかに囲まれることによって、動物でいう腹部のように見えることを狙っています。


この3つを、全部足すとこんなふう。

一見すると複雑に見えるデザインでも、実のところそれを構成しているのは単純な円と直線である、ということがわかります。
そうすると、それらの交点のうち、どの点を選び、そのことによって全体の調和をどうやって整えてゆくか、というところがデザインする側の問題になってくるのです。


ただ交点を選んだだけだと、直線と直線がいきなりぶつかって唐突な印象を与えるときには、そこから傾きを求めて、線どうしをなめらかに結ぶこともあります。

動物を見ていても、やはり「毛並み」というものがありますからね。


では次は、いよいよ実際に作ったものを見ながら批判を乞うことにしましょう。


(4につづく)

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