2011/10/06

革細工と趣味の考え方 (1):時間がないのになぜ革細工をするのか

このBlogを見ていると、


けっこう頻繁に革細工の話題が出てきます。

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最近読者になられたみなさんは、わたしのことを手芸かなにかが趣味の人間なのかと思っているかもしれませんね。
昔からの友人からも、毎年あたらしいことに手を出して落ち着かない人間のように思われているかもしれません。

それでも、時間がないと言いながら革などを触っているということは、実のところ言う程でもないのだろうと思われているかもしれません。


でも、どちらも誤解なのです。

記事を見返してみるとおわかりになると思いますが、革の加工をはじめたのは去年の終わりごろなので、まだ1年も経っていませんし、表面上の多趣味を誇らしく思ったことはありません。

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わたしが「そもそも、」と言い始めると構えてしまうかもしれませんがあえて言ってしまいます。

趣味というのは、地球で生まれた生命が、地球環境の中で揺さぶられ、その格闘ともいえる数億年にもわたる日々の中でその身を環境にふさわしいものへと磨き上げた結果、人間という形態をとるようになってはじめて営まれるようになった「労働」という観点から見直されるべきものです。

それは時間つぶしなどでは決してなく、目的的な行動と言い換えたほうが正確な理解に近いものなのですが、一般の人たちの中には、「だらだら時間を潰す娯楽」というイメージがいまだに根強いので、勘違いしてとらえられがちのようです。

しかしそれは見た目だけに左右された表面的な(学問で言う現象論的な)見方なのです。
いくらパチンコやテレビやビデオゲームに興じる人間の姿が自堕落に見えるのだとしても、それはその趣味を選んだ主体の人格の問題なのであって、「趣味に選ばれた営みそのもの」だけが自堕落なのではないということは押さえておいて欲しい事実です。

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宮本武蔵はなぜ水墨画も描いていたのか?サルは樹上でなぜ進化したのか?なぜ寝起きに手をぎゅっと握ると眠気が飛ばせるのか?手芸をするとなぜ欝が解消されるのか?

そういう歴史的な断片や経験的な事実は、ひとつの共通する側面を持っているのですが、ものごとを知るということを、知識の収集に還元してしまう場合には、まるでそれらの間に横たわっている論理性を把握できず、けっきょく本質的な人間理解へとつながってゆかないようです。

武道を志す者にとっても「多芸に秀でよ」とは、ほんとうはどのような意味を含んでいたのだろうかと考えてみなければならないのだとしたら、趣味と呼ばれているものについても同じことが言えるでしょう。

わたしは、座学よりも、むしろ趣味のほうを一生懸命取り組んでほしいと思っているほどなのです。
趣味をいい加減にする人は、生活や仕事もルーズなのではないでしょうか。

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そういうわけでわたしは革細工について、1年間をめどに、3ヶ月ごとに大きな目標を設定して、今年の年末まで取り組んでみるつもりで毎日時間をとってきました。

なにを目指しているのかといえば、頭の中に描いた像をどのような作品へと仕上げてゆくかという、認識から表現・実践への技術論を確かめてみたかったからです。

趣味というものを単なる暇つぶしではなくて、ひとつレベルを上げて論理の段階で理解しておくと、あたらしいジャンルに取り組むときにでも、大まかな構造をつかまえた上で取り組むことができるようになってゆきます。
そうすると最終的には、「あたらしいものへの取り組み方」そのものが、技として身についてゆくというわけですね。

ここの記事を熱心に読んでくださっている読者の方は、あたらしいものへの取り組み方というのは、技術的なことの他に、「あたらしいものへ取り組む意欲」についても言えるのでは、とおっしゃってくださるかもしれません。(そのとおりです)
ただ姿勢の認識の土台の力への浸透は難しい話になるので、回を改めましょう。

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さて、大略するとそういうことが理由で、眠い目をこすって指を木づちで叩いたり水ぶくれを作ったりしながら革を切ったり縫ったりしているのですが、この秋でいったん修了し、冬は知人への贈り物を作るために使い、わたしの毎日の修練としての革いじりは終了とするつもりです。

こういうことを断っておく気になったのは、どうしても表面上の趣味というのは目につきやすいらしく、毎年違うものに取り組んでいると、単なるマルチタレント的な意味でその道をなぞらえようとする人がいることが、すこし危うく映るようになってきたからです。

どんな趣味に取り組むのかは例外を除いて各人の自由ですが、趣味そのものに着目する姿勢を改めなければ、論理性を高めることはできません。
それは直接的に、「一流」になれるか否かの分水嶺でもありますから、いちど考えてみてほしいところです。
(さて、では「一流」とはどういうものでしょうか?もしあなたが一流を目指すなら、仮にでも規定してみなければなりませんね。)

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ともあれ趣味については、もう少し書いておく必要があるのかもしれません。

ひとまずは今年の春先に「趣味はどう選ぶべきか」という記事と、それにつづく記事でも触れておいたので、興味のある方はご覧になってみてください。

Buckets*Garage: 新しい季節をおくる諸君へ:趣味はどう選ぶべきか
Buckets*Garage: このBlogはなにを伝えたいのか(1)
Buckets*Garage: このBlogはなにを伝えたいのか(2)
Buckets*Garage: このBlogはなにを伝えたいのか(3)


次の記事では、革細工を例に引きながら、具体的な問題をどう考えてゆくかを書いてゆきましょう。


(2につづく)

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