いくつか革でバッグを作りました。
そのうち、去年の10月ごろに作ったフロントバッグG2のオーナーと、これと世界観を同じくするリアバッグを作るとしたら、どんなものになるだろうか?というお話を進めていました。
以前に製作した自転車用フロントバッグG2。 G2というのは第2世代、という意味の単なる型番です。 |
今回のものは、前回作ったものの世界観を用いて作ることになります。
読者のみなさんも、「自分ならどうデザインだろうか?」と考えながら読みすすめてみてください。
文芸の世界で続き物をつくるというのは、前作をうまく継承しなければならないために、ゼロから創作するものよりも条件や制限が多くなりますね。
しかしそのとき、作品を規定する枠を「制限」と呼ぶと、どうしても狭苦しい印象を持たれがちです。
ところが、制限なんてものがなければもっと良いものが作れるのに!とばかりに、部屋に入りきれないキャンバスを特注で作らせたり、高い画材を調達してきたからといって、その作品の質が良くなったりはしません。
もっとも、1週間ぶりに覗いた晴れ間を水彩画で表現したいのに、青も水色も絵の具がなければ困ってしまいますが、この場合には、当人の目的によって、ひとつの原則がかたちづくられているからこそ、それに照らすかたちで「足りないもの」が明らかになっているに過ぎないのです。
創作活動に必要不可欠なのは、実のところそれを取り巻く制限を取り払うことなのではなくて、これから取り組もうとすることについての像をより深くすることであり、より強い目的意識を持つことであり、より明確に原則を意識するということなのです。
制限というものが与えられているということは、目的像が絞りこまれているということでもあるのですから、創造性を阻害することはむしろ稀なのであって、その制限の中でいかに最高のものをつくることができるかという意味で、作り手当人の創造性がより問われることにもなるわけです。
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今回の創作活動の条件を確認する前に、これまで作ってきたものをおさらいしておきましょう。
読者のみなさんも、わたしの身になって(観念的に二重化して)、さて、これから新しい創作をするにはどうすればいいかな?と考えを進めてみてください。
これまで作ってきたのは、フロントバッグばかりでした。
例外的に、普段使いのバッグを自転車にも括りつけられるようにしたもの(サイドバッグ)もありましたが、自転車キャリア専用の、あくまでも自転車で荷物を運搬するためのリアバッグをつくるのは初めてです。
その中で今回は、以前に作ったG2の世界観を共有するものでなければなりません。
フロントバッグの場合は、ハンドルの間に入って、しかもハンドルを握る手にも当たらないかたちでなければいけませんから、さほど大きなものにはなりません。
ところがリアバッグの場合には、自転車本体に備え付けられた後ろのキャリアに載りさえすればいいのですから、そのかたちにあまり大きな制限はありません。
しかし先ほど確認したように、制限がゆるいということは、それだけ考えるのが難しい、ということでもあるのです。
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そのことを整理して、考えてゆく筋道を立てるために、オーナーとわたしとで、以下のようなまとめを作りました。
前(フロントバッグ)も後(リアバッグ)も「キウィ」というモチーフを使うことなどでは一致していますから、このうち今回は、「尻尾」や「ハニカム」といったモチーフを、いかにふくらませて盛り込んでゆくかが鍵なのだ、ということになりました。
なぜにハニカムが突然出てきたのか?といえば、自転車用のキャリア(荷台)のナナメにぴったりと這わせるためには、そのようなかたちが一番合理的だと考えたからです。
そのように考えてみて、だいたいの条件が決まりました。
・ひとつに、G2の世界観を継承していること。
・ふたつめに、リアキャリアにふさわしい「尻尾」、「ハニカム」といったモチーフを含んでいること。
世界観の継承、というのにはいろいろなやり方がありますが、一般的に言えば、
「具体的なものをいったん抽象化したのちに、別の要素を加味しながら具体化しなおす」
ということだと考えればよいでしょう。
その第一の否定のために、G2の顔の部分をシンプルな直線を使って単純化したものは、このようになりました。
↓
試作001 |
えらく変なデザインだなあ、と思われるでしょうか。そうですね。
ですが、新しいデザインを、なんらかの合理性を手がかりに探求してゆく時には、こういったところから進んでゆく必要があるのです。
さて、ではどうすれば良いデザインになるでしょうね。
それを考えてみてください。
(2につづく)
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