2011/10/31

構成とはなにを意味するか:「文学考察: あしー新美南吉」を中心にして (1)

こちらで文学のコメントをするのは久しぶりですね。


最近は個別の修練や研究についてのコメントをこちらには載せていなかったために、あたらしい読者の方にはなじみがないかもしれませんので簡単に説明させてください。

このBlogはもともと、わたしのところに出入りしている学生さんにたいして、個別のメールや電話で指導していては手一杯になってしまうという事情があって、個別の質問を少し一般化することで行き詰まっている問題の解法の手がかりにしたいという目的で作られたのでした。

ひとりが行きあたった特殊な問題を一般化して論じておくということは、それぞれが専攻する特殊な分野を越えたところには、ある普遍性や一般性、原理や原則が隠されていることを暗示しています。

そしてそれは、ものごとには具体的な個別を貫くものが隠されているということをおさえ、原則をしっかりとふまえておけば、どんな特殊な問題をも正しいやり方で外堀を埋めて追い詰めてゆくことができる、という側面も持っていますから、みなさんにとっては、抽象的な論理を使ってそれぞれの具体的な問題を解くための手がかりを、自分のアタマで考えてゆくというひとつの実践過程をもってもらえることにもなるのです。

◆◆◆

そういう理由があって、あまり特殊な問題へと言及してしまっては、当初の目的がそもそも意味をなさなかったことにもなってしまいますから、個別の学問的な話題はできるだけ取り上げないようにしているのですが、文学作品については日常言語の範囲内で表現されていることから、たたき台としてここでも積極的に取り上げてきやすく、事実そうなってきたという経緯がありました。

論者が取り扱っている文学作品については、「青空文庫」というサービスを使っているので、他の読者のみなさんも無料で参照することができます。(URLは時間が惜しいので貼りません。参照される場合はGoogleで検索すればすぐに出てきます。)
iPhone、iPadには、それぞれi文庫S、i文庫HDにすべての作品が収録されています。アプリケーションについてはこの前の記事を見てください。
ここでは著作権の切れた文学作品については読み放題なので、とてもいい時代になりました。
大学の講義を録画した「iTunes U」などもあり、工夫をすれば、いつからでも、いつでもいくらでも勉強ができる時代ですから、うまく活用してゆきましょう。

では本題です。
今回の記事は、一般の読者のみなさんもすこし付き合ってほしいと思います。

まずは、論者が書いた評論についてざっと目を通してみてください。

◆◆◆

文学考察: あしー新美南吉
 ある二匹の馬が、窓の傍で昼寝をしていました。すると、涼しい風が吹いてきたため、一匹がくしゃみをして目を覚ましました。しかし、馬が立ち上がろうとすると、足が一本しびれて上手く立てません。ですが、これを勘違いした馬は「たいへんだ、あとあしをいっぽん、だれかにぬすまれてしまった。」と、勘違いしてしまいます。そして、この後、勘違いをしているこの馬は果たしてどうのような行動に出るのでしょうか。 
 さて、この作品の特徴は、〈子供の真っ白な感性ではじめての体験を瑞々しく描いている〉というところにあります。 
 まず、私たち大人にとって、「しびれる」という感覚はごく当たり前の身近なものです。ですが、何もしらない、経験すらしたことのない子供にとって、それは未知の感覚であり、不思議な出来事として受け取ることでしょう。この作品は、まさにそういった子供達の視点で描かれています。ですから、作中の馬はこの未知の体験にぶち当たり、自分なりに予測を立て、あれこれと実験をしているのです。そして、この初々しい馬の姿を大人の私たちが見た時、当たり前だった感覚が当たり前ではなくなり、馬(子供)のこの予測のつかない行動に目を見張り楽しむことができるのです。
◆◆◆

ここで着目してもらいたいのは、この評論の構成がどのようなものになっているか、ということです。

評論中の意味段落はそれぞれ、
1. あらすじ
2. 一般性
3. 論証
となっています。

その中身に目を向けると、
「1. あらすじ」では作品そのものの要点を捕まえながら全体の流れを捉え返し、
「2. 一般性」ではそれをさらに一言で要することで、
「3. 論証」での論者自身の読み解き方を読者へ伝えることへと繋げてゆく、
という形になっているのです。

◆◆◆

論者がこのような構成にしてくれているのは、わたしが数年に渡ってそのように指導してきたからですが、論者はこの修練を、多い時には週に6回という密度で取り組むことをとおして、アタマの中の認識のあり方が、その修練と量質転化的に浸透する形で整えられてきています。
(もっとも修練をサボると、質から量の転化へと落ち込んでゆきますが…。これに限らずこのblogで使われている学問用語については、三浦つとむ『弁証法はどういう科学か』で確認してください。)

なぜこのやり方を厳しく要求してきたのかということは、指導された側である当の論者本人にもその理由を明示したことはないと思いますが、それはこの構成が、学問の世界で培われてきたやりかたになぞらえられているからです。

実はこのことは、以前に書物との向き合い方を論じたときに、「雑書に向かうを止して」、一流の本と向き合うようにお願いしておいたことと通じており、これこそが三流と一流を分ける分水嶺なのです。

一流の本というのは、
1. それまでの歴史を総括して一身に捉え返した上で、
2. 専攻分野とこれから論じる事柄を概念規定(定義付けること)したうえで、
3. 自分独自の見解を展開してゆく、
という形になっています。

◆◆◆

さてここまで書いたときに、ではこの構成を厳しく守らされて表現することを、毎日のように数年間に渡って取り組むと、当の修練する者はどのようなアタマになってゆくと思いますか。

わたしたちは幼少の頃、夜中にはおねしょをしていたでしょう。

あれはいつかは解消してきて今に至っており、今では夜中でも一人で起きだして用を足せるばかりか、とくに尿意を催さない場合にも、友人に連れられて手洗いに行くと、不思議と尿意を催してくるほどにもなっているはずです。

どのような過程があって、そうなってくることになっていったのでしょうか。
次回までに考えてみてください。


(2につづく)

2011/10/30

今日は、

これから一仕事あるので更新はできないと思います。
記事を楽しみにしてくださっているみなさんにはすみませんが、明日また来てみてくださいね。

2011/10/29

どうでもいい雑記:iPadとiPhoneに何入れたらいいですか?(2)

(1のつづき)


◆iPad 03◆

※リンクはアフィリエイトです。(詳しくは前回の記事を参照のこと)

iPad 03
4. Newtonムック 昆虫のすがた ニュートン 昆虫のすがた - Newton Press Inc.
iPhone対応。科学好きにはお馴染みのNewtonだけど、けっこうな数がiPadアプリとしてリリースされている。たまにセールをやって、85円とかいうとんでもない値段になったりするので、そのときに買い占めるとよいかと。もっとも、安くなくても十分に価値はあると思う。

5. 展覧会ガイドPICK-UP オススメ展覧会ピックアップ - KOSAIDO
iPhone対応。その月に、日本で行われている展覧会、美術館イベントなどのポスターを毎月配信してくれる。アート好きにはとても便利なアプリケーション。


◆iPad 04◆

iPad 04
6. Star Walk for iPad Star Walk for iPad - 5つ星の天体観測ガイド - Vito Technology Inc.
星座アプリ。ジャイロセンサーと電子コンパスをうまく使って、たとえば日中に南を向けると太陽が中心の天体が表示される。言葉で言うとわかりにくいが、使ってみるとひとめで凄さがわかるたぐいのアプリケーション。わたしは小さい頃、星座をまる覚えするのがつまらなくて、理科の星座の時間は退屈でしかたなかった。「星一個でかみのけ座」とか、ふざけてるとしか思えなかったもの。船で海に出てみてはじめて、人間にとっての星座の必要性がわかった。今の子供たちは、こんなのがあるんだから羨ましい。

7. 元素図鑑 for iPad 元素図鑑: The Elements in Japanese - Element Collection, Inc
セオドア・グレイの同名著作のiPadアプリケーション版。ただ単に本をスキャンしたようなものではなくて、元素それぞれの説明のほか、その元素にまつわる物体の画像を回転させて眺めることができる、ちゃんとした意味での「電子書籍」。iPad版とiPhone版が分かれており、さらに英語版、日本語版などが別のアプリケーションとしてリリースされているので、購入の際には注意されたし。


◆iPad 05◆

iPad 05
8. Mucha HD Mucha HD - overdamped
iPhone対応。ムチャじゃなくてアール・ヌーヴォーの画家ミュシャです。上のスクリーンショットの最上段からここまでが、画集アプリケーション。歴史的な有名画家の名画が時代区分され、代表的なものが閲覧できる。このシリーズは印象派に偏りすぎているきらいはあるものの、セールで85円になったりするので買わない手はない。今年の4月にドイツの画集メーカー、タッシェンが日本を撤退してしまったのは、こういう電子画集が徐々に普及しつつあるからかもしれない。それにしたって、紙媒体で3000円以上するものが、iPadではジュースの半分位の値段なんだから、そりゃあ商売になるはずがない。

9. Design Classics Phaidon Design Classics - Phaidon Press
iPad専用。古今東西のプロダクトデザイン1000選。創作活動をするときのインスピレーションがほしいときには重宝する。

10. 透明標本 新世界『透明標本』 冨田伊織 - witch&wizards inc.
iPad専用。魚を特殊な方法でホルマリン漬けにした写真集。硬い骨が赤、軟骨が青く着色されているので、生物のデッサンを骨格から始めたいときにも使える。

11. Mini-Monsters Mini-Monsters - 3D4Medical.com Partners, LLC
iPad専用。昆虫の超拡大写真集。棘をいっぱい付けたりしなくても、十分にモンスターである。

◆iPad 06◆

iPad 06
12. Finger Piano+ FingerPiano Plus - Junpei Wada
ピアノの演奏アプリケーション。みんな冗談だと思っているようだけど、このアプリのおかげでピアノを弾けるようになりました。

◆◆◆

さいごに、iPhoneアプリケーション。

カメラアプリや電子辞書アプリは、こちらで紹介するのがふさわしいと考えたので、iPadのほうには載せなかった。iPad版のインターフェイスを搭載したものは、個別に記載した。

◆iPhone 01◆

iPhone 01

1. 写真(内蔵アプリケーション)
写真投稿サイトFlickerでは、iPhone 4は一眼レフNikon D90を超えて、すべてのカメラの中で最も使われている「写真機」になった。それは、iPhoneで撮った写真がそれなりに綺麗なことと、GPS情報を自動的に登録してくれるから、また本体のみでそのままレタッチできるからだろう。
iOSがバージョン5になってから、さらにとんでもないキラーアプリケーションになった。その理由は、「フォトストリーム」機能につきる。くわしい説明は省くが、あなたが出先でiPhoneで撮った写真が、なにも操作しなくても、自宅に戻ったときには自宅のPCで表示されている。わたしはこの機能のおかげで、blogの更新やレポートの作成が飛躍的に楽になった。ただPCは、Mac OS X Lionか、Windows Vistaか7でないと使えないのが残念なところ。

2. マップ(内蔵アプリケーション)
こちらもキラーアプリケーション。もはや数年間で数万円ずつ更新料をとられるカーナビと違って、完全に無料。わたしは北海道をはじめとした旅行でいつもお世話になりまくっている。iPhoneは、この2つと音楽・メール・ブラウザ当たりですでに元が取れるほどの機械だと思う。


 ◆iPhone 02◆
iPhone 02
3. 大辞林 大辞林 - 物書堂
iPad版インターフェイスも含まれる。説明不要の有名日本語辞書のアプリケーション版。図版も収録し、わからない漢字も手書きして調べられる。前回紹介したi文庫HD、i文庫Sなどからもジャンプして意味を調べられる。


4. ウィズダム英和・和英辞書 ウィズダム英和・和英辞典 - 物書堂
iPad版インターフェイスも含まれる。英和・和英辞書。こういうできの良い辞書アプリケーションを見ていると、もう電子辞書を買う時代ではなくなってしまったんだろうなと思わされる。

5. Camera+ Camera+​ - tap tap tap
純正のカメラアプリが機能的に物足りない場合はこれ。タイマーでも撮影できる。革でも段ボールでも、下のようなスタンドをひとつ作っておくとみんなで写りたいときに便利。


6. Kotoba ! Kotoba! (Japanese dictionary) - Pierre-Phi di Costanzo
無料の日本語辞書。外国語話者が、日本語を勉強するためのもののようだが、おそろしい多機能がまったくの無料で使える。漢字を表示すると、各国語への翻訳、例文訳はもちろん、構成部分や筆順までもアニメーションで表示される。いったいどれほどの手間暇をかけられたのか。できればいくらかお支払いしたいほど。

7. AutoStitch AutoStitch Panorama - Cloudburst Research
撮った写真を自動的に認識して、つなぎあわせてパノラマ写真にしてくれる。写真機としては有り余ったコンピューティングパワーを使ったこういうソフトを見ていると、安価なコンパクトデジカメ市場が消滅するのもの時間の問題であることがよくわかる。


◆◆◆

これだけかいつまんで説明しただけにもかかわらず、iPhoneによって、その機能を取って代わられてしまったものは少なくない。

それは、カメラ、電子辞書、ナビ、PCの基本機能(メール、ウェブ)、ゲームなどである。

過激なタイトルを好む筆者なら、「iPhoneは何を殺したのか」とでもつけると思うが、あながち言い過ぎではないだろう。

その拡張性と、年々のCPU、GPUパワーの拡大を考慮すれば、それが侵略する領域はさらに広がってゆく。

来年には、音声認識コンシェルジュサービスのSiriが日本語に対応するから、そうなるとなおのこと凄まじいまでの便利さが待っていることになる。
なにしろ、「明日は傘が要るかな?」とiPhoneに話しかければ、「明日は雨は降らない模様です」と答えが返ってくるのだから。

これほどの便利さを兼ね備えた機器が突然現れるというのは、侵略される業界にしてみればたまったものではないが、そのことに無自覚であればあるほど、わたしたちの能力も、それと同じように代替されてゆく可能性があるということも覚えておきたいものである。

力のある道具は、それを使う者の実力を問うているわけである。


(了)

2011/10/28

どうでもいい雑記:iPadとiPhoneに何入れたらいいですか?(1)

最近よく聞かれるのがこれ。


iPhoneユーザーがものすごい勢いで増えているから仕方がないとは思うけども、学問をやっていると、知識的なことを伝えたりするのが全然面白くなくなってくるから、実のところ答えるのがちょっと億劫なところもある。

論理的なものごとの見方がいかに面白いかということの裏返しなのだが、学問の力が技として身についてゆくと、日常生活の中で起こるあらゆる事柄が、その裏に眠る構造を現し始め、それらが体系性を持った重層構造として位置づけられてゆき、「なるほど」、「そうだったのか」という火花が頭の中でパッ、パッ、パッと散るのがわかるようになる。

刀を振り続けていると切っ先が急所に吸い込まれるような感覚が芽生えるように、
緊急的な非難の時に視野が狭まると同時に遥か先まで見通せるようになるように、
起伏のある道を薄闇の中走り続けると足を置くべきところが光って見えるように、である。

知り合いのレーサーや彫刻家も同じようなことを述べていたけども、ああいう経験を身をもって体験すると、受身の娯楽などというものは、とても満足させてくれるようなシロモノにはなりえない。

ドラッグなんかに走っちゃう人は、ほんとに楽しいことを知らないのではないだろうか。

◆◆◆

さてわたしとしてはそんなふうに、画面とにらめっこしてばかりではなく、アタマもカラダもしっかりと運動形態に置いたうえで日々を送ってほしいと思うのだけども、いまの電子機器は、びっくりするほど便利なので、付き合い方次第では有意義なのは確かである。

ただ同時にわきまえておいてほしいのは、あまりに便利な道具を使うことによって、「一体何をせずに済んでしまっているのか」ということである。

クルマを使えば足が弱るし、キーボードを使うと漢字を忘れるし、ナビを使うと方向感覚が失われる。量的な不足の積み重ねによって、質的な後退が起きてからでは遅い。

たとえば漫画家を目指すのであれば、日頃からデッサンを、デッサン用の鉛筆の削り方をちゃんとしたうえで取り組んでほしい。
物書きの場合であれば、清書はともかく、下書きはしっかり自分の指先で筆記用具を握って取り組んでほしい。

そうでなければ、たとえば前者の場合には、「この一本の線を引くのにいったいどれだけの研鑽があったのか」というレベルの目を養うことはできないから、一流というものを像として描くことすらかなわず、それはとりもなおさず夢として描く像が本質的にレベルの低いものになってしまうからである。

綺麗な直線を引くのに定規が手放せない、定規を当てながらでないと真っ直ぐに文章を書けない、などという現状を放ったらかしにしておくのは、三流でも別にいいやという姿勢でしかないわけである。

◆◆◆

さて、はじめはiPadから。

iTunes Storeでアプリケーションを探すときのコツは、「まずiPad専用版から探す」ということである。
iPadならばiPhone対応のアプリケーションでも拡大して使えるが、iPhoneではiPad専用のアプリケーションは使えないからだ。

なので、iPad専用版を探して、それが見つからない場合には、次善の策としてiPhone版を拡大して使う、ということになる。
iPhoneしかお持ちでない場合は、当然にiPhone版のアプリケーションを選ぶしかないわけであるが、同じ機能を持ったものが両対応版として存在していないかと探してみると、iPadを買い足したときにも無駄にならずに済む。

それにならって、まずはiPadから触れてゆこう。

あまり丁寧に解説している時間がないけれども、独学する力を養うためにも、手取り足取りガイドラインを教えてしまわないほうがよいとも思う。
それから、個別に紹介はしてないけども、スクリーンショットに載っているものはそれなりに使えるものではないかと。ゲームについては、みなさんのほうが詳しいだろうから紹介しない。

※紹介アプリケーション名の右側にあるボタンはアフィリエイトリンクです。アフィリエイトというのは、当blogを経由して商品の売買が成立したときに、売上金額の数%が紹介料としてメーカーからわたしのところに振り込まれるという仕組みで、当然ですが読者のみなさんが追加でいくらか払ったりする必要はありません。収益はすべて、東北の被災地への寄付に回します。

◆iPad 01◆

iPad 01
0. i文庫HD i文庫HD - nagisa
(iPhone版は、「i文庫S」i文庫S - nagisa)青空文庫を閲覧するためのアプリケーションだが、PDFファイル、ZIPで結合した画像ファイルなども読めるビューアー。インターフェイス、軽快な動作などApple純正かと見まごうほどの品質で、電子書籍としてiPadを買ったらこれを入れないと始まらない。わたしは論文も学生の描いた漫画も絵画も、自分の研究で作ったPDFファイルも、全部これに入れておく。

はじめて起動すると、ページめくりにすら感動できる。
青空文庫が読み放題。
1. Dropbox Dropbox - Dropbox
iPhoneにも対応。登録したファイルを、クラウドに保存してくれるサービス。複数の端末間でファイルをやり取りするときに便利。たとえば、ゼミ発表で使うファイルを指定したフォルダに放り込んでおくと、出先にiPhoneからそのファイルを呼び出せる。

2. MindNode touch MindNode - Markus Mueller
iPhoneにも対応。マインドマップをお使いの方なら、これがいちばん使いやすい。Mac版との連動も。


◆iPad 02◆

iPad 02

3. テレBing テレBing - Microsoft Corporation
iPhoneにも対応。テレビの番組表を表示。わたしは使わないが、新聞取らず、テレビを見ている人には便利でしょう。


どうでもいい話をしていたら長くなっちゃった。記事を分けましょうか。


(2につづく)

2011/10/27

本日の革細工:自転車サイドバッグの経過報告とタバコケース

毎日少しずつやってた革細工もあと2ヶ月でおしまい、


そう思うとちょっと寂しい気もするけども、本道を忘れてはいけない。

友人はわたしのことを、「浮石が沈む前に次に飛び移る」人間だと評するもので、一緒になって笑っていたけども、いちおうは的確な評価も、あちこち手を広げてどれも物にならないバカ、というような評価も、十分にもっともだと思っているから、二言はない。

すべては学問のためである。

◆◆◆

表現に関する技術論を確認するために進めてきた革細工もそろそろまとめの時期だ。

今年のはじめごろに、
「革だからとあほみたいな高値をふっかけるボッタクリ業者を潰せるくらいにまでなる」
などとむちゃくちゃなことを言ったけれども、いちおうの目標は達成できそうだ。

というか、もう革のバッグは買わなくても良くなったような気がする。
親戚の子がランドセルを買う前に気づいていればよかったかなあ。

もっとも実際に手を動かしてみると、上には上がおり、「いちおうできる」のと、「掛け値なしの一流」には、恐ろしいほどの開きがあることも自らの確かな実感として思い知ることができる。

私見ではあるが、Rethinkさんのベタ張り技術、Flathorityさんの革作りから手を入れたこだわりと縫製技術などは凄まじいものがあり、他と比べるのが失礼なほどである。

わたしはあくまでも技術論や表現論の観点から見ているので、個別の技術は一定の段階にまで高まれば良い(認識をうまく表現にできる段階、その分野の特殊性が評価できる段階)のであるが、やはりその道の一流というのは流石の感がしきり。

◆◆◆

さて、こちらはこちらで物事を進められたところまでをメモ書きしておこう。

前に友人と作った自転車用フロントバッグが良い感じに日焼けしていたので、この前作ったサイドバッグもどうなるかやってみた。

写真は、晴れの日に外に放り出しておいたもの。
ずいぶん色が変わったのでびっくりした。

蓋を開いて放り出したので、蓋が日焼け、下半分がそのままの色。
蓋の部分、ベルトの左側がベルトの陰になり、日焼けしていないことがわかる。
革もこんなに日焼けするんだねえ…びっくり。
ちなみに前回書くのを忘れていたけど、天棒は340mmです。
革が縮んだので少しはみ出してきた。
◆◆◆

次の日にもう半分を日焼けさせて、週末に小旅行に出かけたあとのものが、この写真。

ちなみに小旅行なら、十分に出かけられて、ベルトを緩めてお土産も入れられる。
次に作るときもサイズはこのくらいでぴったりかと。

こんがり。
コンチョは、チェコの硬貨。
銅色に黒い塗料で上塗りしたもので、下地を見せたいところを紙やすりで削った。
日焼けしたので、銅色と近づいてきて一体感が出てきた。

◆◆◆

次は気づいたこと。

布を縫う時と違って、革の縫製は、縫製のやり方の違いによって、シワの付き方が変わる。
表面に縫い目がないカバンは、できるかぎり裏から縫っておいて、ひっくり返すことになる。(そのほうが縫うのが楽だから)

今回は実験を兼ねて、両方のやり方を試してみておいた。

バッグの右側面。
内側から縫ったので、縫い糸での引っ張りが足りずに糸が見える。
その代わりにひっくり返さずにすんだため、シワがない。
バッグの左側面。
外側から縫ったので、テンションが保てて糸が見えない。
その代わりにひっくり返したので、シワができた。
◆◆◆

総評として個人的には、自転車バッグとしての用途に比重を置くのなら、側面は無理をせずに箱型のほうがすっきりしていて良いのではないかと思う。

工程を短縮するための言い訳かと邪推されるかもしれないが、それが実際に使ってみたところの実感である。

ともあれ、今回の工程をうまくやるための目処は立った。
耳付きの曲面は縫えるようになったから、一般的な鞄を作成するための技術は、一定の段階に達したと言ってよさそうである。

◆◆◆

さいご、タバコケース。

タバコは吸ったことがないので使い勝手はどんなもんなのかよくわからないけども完成。

マグネット式なので厚みが増してしまうが、
使い勝手を考えるとやはりマグネットが良いのではということになった。
正面に縫い目を付けざるを得なかった。
ライターのベルトと合わせて合理性を持たせたが、より高い次元での合理性もあり得るとは思う。
ライターは潰れてるのしかなかったが、サイズを測れればよかったので仮に入れてある。
箱そのものの縫い目と、ライターが底から抜けないためのストッパーを統一して合理性を出した。
一枚革でこういう形をとれるのは、牛半頭分の大きな革を買ってあるから。
切り売りの革を買ったのなら、こんな贅沢はできなかった。
共同で革を買ってくれた友人たちに、この場を借りて感謝。
◆◆◆

革細工をするときには、書籍やらインターネットやらを手当たり次第に調べまくる。

モチーフに合わせて、"leather+bag"ならまだしも、"leather"のみ、"bag"のみ、"antique"のみでも検索して画像を眺めて図書館で資料とにらめっこし、その概念に慣れるまでとにかく調べまくる。

対象とどれだけ向き合ったか、現実からどれほど学んだかが作品の質を決めるからであるが、そうして調べていると、世の中にはなんとも合理性に乏しい、無駄の多いデザインがたくさんあるなあと思わされる。

装飾については無駄なようでいて高度な合理性を保っているのだが、たとえば手帳のサイズほどもある財布なんていう、見るからに無駄の塊のようなものは、どれだけ最小限のサイズと重量で同じ物を安全に入れられるかという合理性ばかりを考えて、ミリ単位で縫い代をケチっているわたしからすれば狂気の沙汰である。

しかし、商品として成立しているからには、それを評価する消費者の存在があるのであるから、その意味ではやはり、存在しているものはそれなりの合理性があるものとして受け止めなければならない。

そうは言ってもここらへんの感覚が禅的なのは、やっぱりAppleからデザインというものの多くを学んできたからかもしれない。
それとも、旅好きだからかもしれない。旅では、無駄なものを持っていくことは死活問題だものなあ。

わたしが感性的に好きなのは、"less is more"(過ぎたるは猶及ばざるが如し)である。

原理的なことを言えば、ミニマムな形態を突き詰めていれば足すのはたやすいのだが、事実的にはこういうところを使い手の認識のあり方にあわせて、たとえばスタッズバリバリのが好きだとか、余計な金具がたくさん付いている方が強そうで好きだとかにするのは、なかなかに難しそうである。表現過程の構造はわかっていてもね。