いつもながらいいかげんな写真で申し訳ない。 ここに貼るのは、すべて「(人様ではなく)自分のために」「撮れたまま」である。 だって、凝りだすといくら時間があっても足りないんだもの… |
よく考えたら、肝心の自転車への取り付けの仕方を紹介するのを忘れてました。
デザインはもういいから次の話に行っておくれ、
と言われるかもしれないので、もう一つ記事を公開しておきますので勘弁を。
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さてサドルバッグというからには、自転車のサドルに取り付けられなければなんの意味もないわけです。
いちおうご説明しておきますと、従来の自転車用のバッグといえば、サドルにしかつけられないか、ハンドルの部分にしかつけられないものがほとんどでした。
よくあるフロントバッグ(ハンドル部につける) |
よくあるサドルバッグ |
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なかには、サドルにも付けられるようなフロントバッグもあります。
以下のようなものや、
モンベル製の、フロント/サドル共用バッグ |
わたしが今回のバッグをつくるときに参考にした、ジンバーレのバッグ(Buckets*Garage: デザインにおける弁証法 01)がそうです。
フロントバッグにもサドルバッグにも併用できるものは、探すのが難しく、事実数えるほどしか無いのですが、その理由の一つが、「ベルト部」に互換性を持たせにくい、ということです。
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今回は、自分でわざわざバッグをつくるくらいですので、バッグの設計当初から、その問題にも取り組んでみようと考えていました。
そういうわけで、ひとまずモンベルが採用している仕組みを参考にしながら、上面と、背面にそれぞれベルトループとなる穴を設けました。
バッグを背面から見たときの図。 |
以前に作ったベルトでとりあえずフロント部に固定してみました。
背面のベルトループにベルトを通し、ハンドルと固定。 |
フロントキャリア(荷台)はあったほうがよさそうですが、とりあえず装着できます。
ひとまずこれでよし。
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さて次は、面倒なサドルとの固定です。
サドルは、もしバッグを付けられたとしても、ふとももに当たらない工夫が必要だったりと、けっこう難しいのです。
これは面倒かもしれないぞと警戒していたのですが、
いろいろといじってみたら、非常に具合の良い方法を思いつきました。
サドルの下にあるレールと固定。 |
こうやって、2本のベルトをクロスさせているのですね。
ハンドルと固定するのと同じベルトでサドルにも、しかもワンタッチで固定できるというのは、うれしい誤算でした。
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ものづくりをしていると、あれやこれやと計算し尽くして設計したあとには、こういう偶然が起こることがあります。
ただ計算するというのは、現実から抽象された数字という一般性を使って、あるものと別のものとを同列に比べることなのですから、それも十分にありうることなのであり、またそこに人間の認識の癖、作り手の整合性への関心をはじめとした癖といったものが加味されてきますから、まったくの偶然というわけではありません。
人間の指の数が左右合わせて10本でなければ、わたしたちの使っている数字は十進数ではなかった可能性が高いですし、わたしが使っているものさしがメートル法に基づいているのでなければ今回の一致はまた違った形であらわれていたはずです。
そういう意味で、今回の一致は、その前提の段階で、ある程度絞りこまれていたのだ、ということですね。
さてその証拠といってはなんですが、今回はもうひとつの偶然がありました。
今回のバッグには、底面をキャリアと固定するための金具があります。
底面部。金具がどちらを向いてもうまく収納されるような形の固定具になっている。 |
この金具に、下のベルトを通してフロントおよびリアのキャリア(荷台)と固定するわけです。
裏返すとこういう具合ですね。
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これを、フロントでもリアでも使えるものにできれば1本だけですみます。
それではいったい、穴の間隔をいくつにすればよいのかと、それぞれ計算してみました。
その結果は、以下のとおりです。
(1) フロントキャリアとの固定…257mm
(2) リアキャリアとの固定…300mm
(※それぞれのキャリアは、リーベンデール専用キャンピーです)
また念のため、このベルトを他の部分とも互換性を取れないかどうか、言い換えれば他の部分にも流用できないかと考え、それも同じように測ってみました。
(3) シートポストと背面ベルトループとの固定…330mm
(4) 革サドルにある金具と背面ベルトループとの固定…300mm
また、これは紙で測ったときのもので、ためしに革でできたベルトを当ててみると、紙で測ったときの誤差が15mmであることがわかりました。
そうすると、(5) それぞれに15mmを足した分の穴もほしいところです。
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さてここで、なにか気付くことがありませんか?
わたしたちは、義務教育で「公約数」というものを習いましたが、ここでもそれが使えることになりました。
なぜかというと、300mmを基準点としてそこから15mmをひとつの区切りとすれば、上で挙げたそれぞれの固定が順に、
(1)3区切り小さいところ、(2)基準点、(3)2区切り大きいところ、(4)基準点、(5)
としてすべてに当てはまるように設定できるからです。
つまりベルトの穴の間隔を15mm刻みにすれば、バッグをどこに固定するときにでも、1本のベルトだけですべての用途をこなせるわけです。
細かいことを言えば(1)は区切りよりも2mmだけ遠いのですが、革は柔軟性がありますから問題にはなりませんでした。
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そういうわけで、今回のバッグを自転車で使うときには、以下のものさえあれば、どのような装着の仕方を採用するときにでも問題はない、ということになりました。
・上面および背面のヒネリ(金具)つきベルト×2
・底面のバックルつきベルト×1
今回は偶然に助けられた部分もありますが、こういったことは、あるテーマに基づいて、作品や製品を「つくり込む」ことによって、突き詰めてゆけることでもあります。
裏をかえせば、素人でもここまでできることを、同様の製品を売って生業としているメーカーが満足にできていないということは、「残念」の一言です。
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