2012/05/22

理想をいかに形にするか:自転車バッグG4 "TRUNK" (4)

※前回記事の公開時に不具合があったため、画像を追加し加筆修正したうえで、記事を差し替えました。

GW明けからの革細工記事も、


これで一段落です。

もともと今年は革を扱う予定にしていませんでしたが、ひと通りやるべきことをやれてよかったです。

わたしの場合、表現実践の進め方は1年単位です。
ひとつの素材やその製法について3ヶ月かけて基礎的な実験を終わらせておくと、そのあとの9ヶ月は、学習曲線の増え方が漸増に変わる直前まで(伸び幅がいちばん大きい段階まで)で1年を終えられます。

技術論と表現論は取り組む対象の範囲がとても広く、大体の場合は途方に暮れてしまいますが、1年間をひとつの目的意識を持ってじっくりと取り組むと、研究に必要な範囲の一般的な知識と技術は身につきます。

そしてまたこれは、次の年にも活かすことができますし、一般的な範囲では互換性のとれる素材も少なくない(革細工ができれば帆布やフェルトも同様に扱える)ことから、年月を重ねるほどに効率が良くなってゆくのではないでしょうか。

わたしの生涯自体が実験そのものなので、どれだけ周到に準備していても失敗の連続なのですが、無謀に見えたこの計画もなんとかじりじりと進みつつあります。

(その時点で確かだと思われている認識をもとに、それをその時の持ち前の論理で組み立てて計画を練りますが、常に現実の対象は観念を凌駕するものゆえに、どれだけの能力があろうとも失敗は避けられません。これは認識と現実とのあいだの矛盾の現れであり、ここから、実践なくして論理の発展なし、のひとつの論理が浮上します。
とても難しいところですが、表現に携わる人間は必ず押さえておかねばならない勘所ですから、詳しい説明が必要な場合は改めて聞いてくださいね。)

個別の対象とどう向き合ったか、というそれぞれの経験はたしかに尊いのですが、それがなおのこと抽象化されて、「個別の対象との向き合い方」という<方法論そのもの>を向上させてゆくのでなければ、理論的な研究には到底なりえません。

ここで公開している革素材とその製作について言えば、実際にできあがったものはオーナーとの共同作業の結果であり、その意味では尊いのですが、そこで留まっているわけにはゆかないのだ、というわけです。

そうである以上、わたしが採用している方法論そのものへの批判を読者のみなさんに乞いたいところです。
実践的理論家、理論的実践家のみなさんとの切磋琢磨を祈念して、論理面の記述は擱筆とさせていただきます。

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せっかくの革いじりなのに文字ばかりもいけませんから、さいごに数点の写真を簡単な説明とともに載せておきます。

フタを開けたところ。

裏革はピッグスエード。発色がとても良くて驚きました。
今回は裏革をはじめて貼りました。
これまで裏革をつけなかったのは、この前も言ったとおり、メンテナンスの時に困るからです。

接着剤を使って製作すると、経年劣化で部品を取り替えねばならなくなった時に手も足も出なくなってしまいますから。
今回はオーナーの希望で裏革をつけましたが、外すときのことを考えてゴムのりで貼りあわせているので、いつか剥がれることになるでしょう。これは良し悪しですが、いろいろ考えてこうすることにしました。

消耗品だと考えればメンテナンス性は無視しても良いのですが、せっかくいい革を買ってもらっているので、やはりずっと使ってもらいたいですからね。

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それから、今回ほどこした構造上の工夫です。

これまで作ってきたバッグは、G1のベルトを除いてフロントバッグとしてしか使えませんでした。
ところが今回のG4は、重箱式であることと金属、裏革をつけることなどから、これまでのものよりもかなり重くなることが予想できたため、必要なときにはリアバッグとしてもしっかり使えるものにしようと考えたのです。

フロントバッグとしてでもリアバッグとしてでも共用できれば、構造上からいっても第4世代の名にふさわしいものになると思い、作ったのがこの図面です。


フロントキャリアとリアキャリアの最大公約数をとって底面部をデザインしてあります。
簡単にいえば、前にも後ろにも付けられる、ということですね。

そういう意味でG4は、「フロントバッグ」でもなく「リアバッグ」でもなく、ただの「自転車用バッグ」ということになりました。
フロントでもリアでも、ベルトのような宙ぶらりんではなくしっかりと固定できるバッグは、他のどこを探しても見つからないのではないでしょうか。

今回の場合は、フロントは「リーベンデール用キャンピーM-1」か「テスタッチ用キャンピーM-19」、リアは「リーベンデール用キャンピー33」ならつけることができます。

前に付けたところ。

ピッグスエードの紅色と本体のそれとがマッチしすぎでおろどきました。
ピッグスエードは撫でると雰囲気が変わり、まるで光沢があるかのように見えます。
後ろにつけたところ。

iPadよりひとまわり大きくて重いので、
単体で使う時は後ろにつけたほうが安定するかもしれません。
G3をつくったときの蝶番方式、今回のG4をつくったときの前後共用仕様の底面は、今後とも応用が効きそうです。

ちゃんと考えれば1年でこれくらいのことはできるのですから、自転車アクセサリー業界の努力を期待したいところです。

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レインカバー。

G4用のゴアテックスレインカバー。
フットプリントがほぼ同じの天然水の段ボールで試しながら製作。
事前の天気予報と気象図で、GWツアーはあいにくの天気…
というので、ツアーの3、4日前にものすごい勢いで作りました。

運良くゴアテックス生地が手に入りましたが、縫い目からの雨水の侵入を防ぐための専用テープまでは手に入らなかった(テント用によく使われるシームレステープは剥がれるのでダメでした)ので、裏側から縫い目をゴムのりで補強。

ついでなので、レザーバッグ持ち全員分を作りました。

現地では雨どころか強風と大雨の歓迎を受けたので、思い立った時に作っておいてよかった、と胸をなでおろしました。
カバーがかかっているところには雨の侵入もないようで、意外とちゃんと使えてこっちも安心。

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輪行用のベルト。

旅用の自転車に乗らないみなさんも、たまに電車で、袋詰めした大きな袋を持ち込んだ、スポーティな出で立ちの人たちを見たことがあるかもしれません。

輪行用の取っ手。
底面の蝶番棒にひっかけます。

ああいう、自転車をある程度まで分解して袋に入れた上で交通機関に持ち込むことを「輪行(りんこう)」と言います。
一般の乗客のみなさんにとっては迷惑千万なのも存じているので、基本的には混雑しない時間帯を選んで乗り込むのですが、遠距離だと始発に乗ってもやはり通勤時間とぶつかります。


ショルダーストラップつけたところ。


あれは実に気を使います。ついでに重い。
なにせ、自分を載せてくれるはずの自転車も、それに積んである荷物も身一つで持たねばなりません。自転車が10kg、荷物が20~30kgです。

乗り換えで陸橋の階段を登り下りしたりするだけでも必死ですが、列車が延着したりすると乗り換え時間がまったくなかったりするので、迷惑をかけるだけでなくチャリ乗りにとっても地獄です。
わたしは100kmちょいなら、輪行よりも自走を選んだほうがずっと気が楽です。
ヨーロッパだと、自転車をばらさずに持ち込める車両があるんですけどね。

そういうわけで、どうしても輪行しなければならないばあい、その苦労を少しでもマシにするためのベルト、というわけです。


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余った革でライトスタンド。


自転車用ライトの上に、水を入れたペットボトルを置くととっても明るい。
キャンプでの自炊や、テント内での荷物整理の大きな助けになってくれます。


ものすごい切れっ端感ですね。
わたしは革を隅っこから1mm残さず使いますが、どうにも使い道のない部分は取ってあります。
今回はそういうところを使ったわけですね。
もともとは生きていた牛、少しも無駄にするわけにはゆきませんから。


(了)

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