2011/11/06

【メモ】『スティーブ・ジョブズ I』

100万部突破したらしい。


初代iPodが発売された頃には白いイヤフォンをつけているだけで変人扱いされたなあと懐かしく思い出されるので、手に取った読者のどれほどの心に響くものなのかなと、すこし穿った見方をしてしまう。

何らかの形で成功した人物や製品から学ぼうとするときに、成功したという事実的な結果だけをみて、同じふるまいを真似ようとしても、どうしてもうまくいかないということがすぐにはっきりするものだ。

一人の人間を師と仰ぐときに絶対に押さえておかなくてはならないのは、表現過程における構造の図式のうち、表現そのもの以上に、表現者がどのような思いを込めてそのような表現を取ったのかというふうに考えて、認識から表現までの過程を逆向きに辿ってみることである。

わたしにとってはジョブズは師の一人であるが、だれにとってもそうであるとは思わない。

わたしはこの人について書かれた本を、ほとんどすべて読んできたが、この本について言えば、彼の伝記的な事実をあらゆる角度から検証してうまくつなぎあわせているから、これまででたどの伝記的な本や、もっと悪いことにはゴシップ的な書籍よりも、ずっとたしかな事実が書かれている。

しかしそれでもやはり、誰にとっても大事なのは、学ぶ相手を誰にするかということよりも、「相手からどのように学ぶか」という一事であることを強調して、前置きを終わりにしたい。

言われたことを口真似し友人たちを打ち負かして悦に浸る人間もいるし、
言われたことを一言一句変えずに念仏のように唱えて生涯を終わる者もいるし、
一言いわれただけのことを心の底に持ち続けて数年も向き合い続ける者だっているのだ。

※これから仕事に行くために、ものすごい勢いでタイピングしているのでタイプミスが多いと思いますがご容赦を。響くものがあったときには、原文にあたって前後の文脈を含めて確認してください。日本語版も良い意訳で読みやすいですから。
表題は引用者による、かっこ前の句点のありなしは本文に従う。


◆メモ◆

p.46 ジョブズの宗教観
「キリストのように生きるとかキリストのように世界を見るとかではなく、信仰心ばかりを重視するようになると大事なことが失われてしまう。いろいろな宗教というのは、同じ家に付けられた異なるドアのようなものだと僕は思うんだ。不思議なのは、その家がそこにあると思うときと思えないときがあることだ」(本人。以下、断りがない限り同じ)

p.82 探究心
「スティーブは探究心が魅力の男でした」「自明の理を拒否し、一つひとつ、自分で吟味しないと気がすまないようでした」(当時のリード大学学部長)

p.106 カウンターカルチャー
「21世紀を発明した人々が、スティーブのように、サンダル履きでマリファナを吸う西海岸のヒッピーだったのは、彼らが世間と違う見方をする人々だからだ。東海岸や英国、ドイツ、日本などのように階級を重んじる社会では、他人と違う見方をするのは難しい。まだ存在しない世界を思い描くには、60年代に生まれた無政府的な考え方が最高だったんだ」(U2 ボノ)

p.137 価値観
「マイク(・マークラ)には本当に世話になった。彼の価値観は僕とよく似ていたよ。その彼が強調していたのは、金儲けを目的に会社を興してはならないという点だ。真に目標とすべきは、自分が信じるなにかを生み出すこと、長続きする会社を作ることだというんだ」(本人。このあとに「アップルのマーケティング哲学」がある。共感、フォーカス、印象。)

p.140 デザイン哲学
「洗練を突きつめると簡潔になる」(ダ・ビンチ)

p.166 アイデアとの向き合い方
「優れた芸術家はまねる、偉大な芸術家は盗む」(ピカソ)
「人類がなし遂げてきた最高のものに触れ、それを自分の課題に取り組むということ」

p.169 ナイーブという力
「ナイーブであることにも力がある。」「できないとは知らなかったからこそ、私はなんとかしてしまったわけです」(ビル・アトキンソン)

p.176 お金
「アップルでは、たくさんのお金を手にしてそれまでと違う暮らしをしなければならないと思ってしまった人をたくさん見た。ロールス・ロイスに家を何軒も買った人もいたよ。それぞれの家には執事がいて、その執事を束ねる人もいる。奥さん方も美容整形でなんとも奇っ怪な人になったな。あんな暮らしはしたくなかった。絶対おかしい。だから、人生をお金につぶされないようにしようと僕は心に決めたんだ。」

p.179 このころの学生は物質的でキャリア志向が強い
「僕が学校に行ったのは60年代直後で、実利的な方向性が一般的になる前だった。いまの学生は理想論を考えることさえしない。少なくとも、そうは感じられない。哲学的な問題についてじっくり悩んだりせず、ビジネスの勉強に打ち込んでいるんだ」

p.202 大量生産可能な芸術品
「ルイス・ティファニーが自分の手ですべてをやろうとせず、デザインをほかの人々に与えることができたのはなぜかなどについて話し合いました。」

p.205 メンター
合理性や機能性の重視(バウハウス)、「神は細部に宿る」(グロピウス)、「少ないほうが多い」(ミース)

p.208 和のスタイル
「仏教、とくに日本の禅宗はすばらしく美的だと僕は思う。なかでも、京都にあるたくさんの庭園がすばらしい。その文化がかもし出すもの深く心を動かされる。」

p.209 美的感覚はどう発展するか
「すばらしい芸術は美的感覚を拡大する。美的感覚のあと追いをするんじゃない」

p.216 形態は機能に従う、よりも
「形態は感情に従う」(ハルトムット・エスリンガー、フロッグデザイン)

p.233 海賊魂
「海軍に入るより海賊になろう」「どのようなものにも立ち向かう反逆者魂を持ってほしい、むちゃくちゃをしながらどんどん先に進む冒険好きになってほしい、自分たちがしていることに誇りを持ちながら、まわりから次々と盗むチームになってほしい」

p.263 人類の成果
「人類の体験と知識という財産にお返しができるモノを生み出すのは、うっとりするほどすばらしいことなんだ」

p.283 もっとも革新的な製品が勝つとはかぎらない
「マイクロソフトが抱えている問題はただひとつ、美的感覚がないことだ。足りないんじゃない。ないんだ。オリジナルなアイデアは生み出さないし、製品に文化の香りがしない…僕が悲しいのはマイクロソフトが成功したからじゃない。成功したのはいいと思う。基本的に彼らが努力した成果なのだから。悲しいのは、彼らが三流の製品ばかりを作ることだ」

p.289 日本の規律
「日本のすばらしいところであり、僕らの工場に欠けている点は、チームワークと規律だと僕は思う。工場をきれいに保てるだけの規律がなければ、あれだけのマシンをちゃんと動かせるだけの規律もないってことなんだ。」

p.299 アーティストは先を見る
「アーティストとして、創造的な人生を送りたいと思うなら、あまり過去をふり返るのはよくありません。自分がしてきたこと、自分という人間をそのまま受け入れ、それを捨て去らなければならないのです。」
「自分のイメージを強化する外界の圧力が強くなればなるほど、アーティストであり続けることは困難になります。」

p.400 第一の否定、相互浸透
「すばらしい収穫は粗末なものから生まれる、喜びはがまんから生まれる、と父は信じていました。ものごとはその反対に振れるという、ほとんどの人が知らない法則を理解していたのです」(リサ)


◆参考URL◆
・ジョブズ氏と過ごした時間--公認伝記著者インタビュー
http://japan.cnet.com/interview/35009678/

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